虹自然に抱かれて再生する心。

素直な自分を引き出す自然のパワー

ある住宅街にぽつんと佇むタヒチアンレストラン「虹」。そこでなんの不満もなくフロア係に専心していた瑛子だったが、母の急死で彼女の心は不調をきたし、思わぬ不幸を招く。踏みつけにされる動植物を目の当たりにすることで、むくむくと募る人への不信感、そして、頭をもたげる禁断の想い…。瑛子は複雑な気持ちを抱えながら、念願のタヒチに旅立つ。圧倒的なタヒチの自然、ゆるやかでやさしく流れる時間、いきいきと自由に生きる動植物に触れることで、瑛子に深く豊かな愛が蘇る。吉本ばななは、1987年「キッチン」で海燕新人賞を受け、デビュー。「TUGUMI」で山本周五郎賞、「不倫と南米」ではドゥマゴ文学賞など、数々の賞を受賞。英語圏をはじめ、ヨーロッパやベトナムなどで翻訳され、愛読者は世界各地に。本作は確かな希望の訪れを描いた書き下ろしの長編小説で「世界の旅」シリーズ四作目にしてラスト。人間の細かなこだわりや考え方などを、ミクロな行動パターンに落とし込み、登場人物の印象を読者の心の中に深く埋め込んでしまう「ばななワールド」に浸りながら、タヒチの自然に想いを馳せてみてはいかが？