しずかな日々心をほどく、
とある夏の風景

2020.07.16

劇的ではない人生を
日々淡々と生きる

おじいさんの家で過ごした日々。それはぼくにとって唯一無二の帰る場所だ。ぼくはいつだって戻ることができる。あの、はじまりの夏に...。母親と離れ、突然居候することになった祖父の家を舞台に、人生のターニングポイントとなった少年のあるひと夏を、大人になった主人公が回想する形で物語は進む。なんの取り柄もなく陰の薄い主人公、枝田光輝は小学5年生のクラス替えで、お調子者だが活発で人気者の押野と出会う。それまではだれの目にも留らないよう気配を消してきた枝田だったが「えだいち」とあだ名をつけられ、親友のように接してくれる押野のおかげで、無彩色だった毎日がキラキラと輝くものに一変。今日の楽しさが明日の希望へと繋がっていく。仲間と縁側で食べるスイカ、ラジオ体操、自由研究、小さな冒険、祖父が作る漬け物の美味しさに目覚める少年たち…。話の中心はよくある夏休みのエピソードのはずなのに、著者の繊細で叙情豊かな表現や、緊迫感のある伏線を所々に差し込んだ構成で一気に読ませる。少年が成長していく行程を秀逸な描写で綴り、野間児童文芸賞、坪田譲治文学賞をダブル受賞した、揶月美智子の感動作。

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しずかな日々

著/文:椰月 美智子
出版:講談社
価格:495円(税抜)

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