パターソンいつもと変わらぬ日々の輝きを、
詩情あふれる映像にのせて

ありふれた日常こそが
無二の“財産”

ニュージャージー州の小さな町、パターソンが舞台。そこで暮らす主人公のバス運転手のパターソンは、朝起きると妻ローラにキスをし、仕事に向かい、バスを走らせ、帰宅後は妻との夕食をすませ、愛犬マーヴィンと夜の散歩。そして、行きつけのバーでビールを1杯だけ飲む。一見、単調な毎日に見えるが、秘密のノートに日々、詩を書きつづる彼の目には、車窓の景色や乗客の会話、人生を謳歌する妻の様子など、日常のささいな出来事のすべてが輝いて映る。そんな、パターソンのささやかな7日間が静ひつなタッチで描かれる。深い人生観をにじませる詩情豊かな映像とセリフの数々はジム・ジャームッシュ監督作品ならでは。主役のアダム・ドライバーが抑制の利いた繊細な演技で作品に味わいを深める。最後に姿を見せる永瀬正敏も印象的。この3者の化学反応が映画ファンの感性をくすぐる。「昨日」と同じ日は1日としてない。ありふれているように思える日常にも優しさとおもしろみがあふれ、観客それぞれの人生を彩っていることを教えてくれる。この時期にゆっくりと観たい1本。